2025年02月25日

柳は萌ゆる

 今日は出勤日。がしがし採点するぞおと思うていたんやけれど、職員研修が90分間とか、短時間やけれど会議が招集されたりと、なかなか採点に集中でけん。どうやら明後日の定休日にも休日出勤せんと締め切りまでに成績を出すことがでけんようです。
 試験監督は2コマ。その他、下校指導当番など、採点に集中でけん要素は他にもあったりした。うーむ。
 30分ほど残業。明後日出勤する気になっているので、あまり長々と残業はしないことにした。帰りのバス電車の乗り継ぎはまずまずうまくいった。帰宅してすぐ寝床で社説のダウンロード。夕食後は読書。やはり疲れていたんやね。一度横になるとなかなか起き上がる事ができなんだ。
 平谷美樹「柳は萌ゆる」(実業之日本社文庫)読了。「大一揆」では幕末の盛岡藩で起こった一揆を農民側から描いたが、作者は本書では盛岡藩の武士たちがどう受け止めたかというところから描き始める。主人公は若くして藩の重臣となった楢山佐渡。彼は「大一揆」の主人公の三浦命助と出会い、身分に関係なくすぐれたものが政治に関わる世を理想とするようになる。そして、薩長による討幕運動は彼の思う理想の政治を実現するものではなく、単に為政者が変わるというだけのものと喝破し、奥羽越列藩同盟に属し、「官軍」と対峙することになる。劣勢の中、楢山佐渡が通した筋とは……という話。戊辰戦争の奥羽越列藩同盟となると、司馬遼太郎の長岡藩、河合継之助を思い浮かべる人も多いかと思うが、いくら司馬遼太郎が美化しても、河合継之助よりも本書の楢山佐渡の方が人としての器が大きいと感じさせる。それは、「大一揆」を武士の側から経験し、権力闘争の勝者の奢りなど、人の心理の裏表を見据える人物として描かれているからなのだろう。面白いのは、盛岡藩の政治の在り方。誰かの政策が行われている間、反対派は逼塞しながら対抗案を練り、その政策が失敗して自分の番が来たときに対抗案を実行。失脚した方はそこで終わるのではなく、次にまた自分の番が来るのを待ちながら新たな対抗案を練る、というように交互に互いの成功した部分を取り入れながら政治の表舞台に返り咲くところ。ただ、平時ならばそれでもよいが、「官軍」を前にしたときに対立した藩の方向性をどう決めるかというような場合、そのような悠長なことは言っていられなかったという現実の前には仮想敵に仕立てられた奥羽越列藩同盟はもろかったということ。しかし、その現実に押し流され、図らずも逆賊とされた楢山佐渡の遺志を継ぐ者として、作者はある若者を登場させる。そして、その若者を主人公にした作品を続編として用意している。その若者は、平民宰相として名高い原敬。そちらもいずれ読む予定。東北人でなければ書けない物語が「大一揆」であり、本書であり、その続編なのですね。東北から見た明治維新。それは関西人である司馬遼太郎には決して書けなかった物語でもあるのです。
posted by 喜多哲士 at 23:59| Comment(0) | 読書全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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