2025年03月03日

心とろかすような

 今日は出勤日。夜中に雨が降っていたけれど、大阪市内は、明け方にはあがっていた。ところが、坂道の学校の最寄り駅まで来たら横殴りの本降り。傘が飛ばされんように必死に歩く。職場について少し休憩。そこからはひたすら提出させたプリントの評価をし続ける。定時を過ぎて、やっと完了。データ入力は明日になるか。8時間くらいプリントを読み、評価のスタンプを押し、閻魔帳に転記。さすがにくたびれた。帰宅後、寝床にどぶさって社説のダウンロードや読書。夕食をはさんでまた読書の続き。プリントをチェックする頭と、本を読む頭は違うところを使うているみたい。あるいは、気分転換として読書に没頭したかったのか。明日はまた本降りの予報。きついなあ。
 宮部みゆき「心とろかすような マサの事件簿」(創元推理文庫)読了。「パーフェクトブルー」で活躍したもと警察犬のマサを語り手とした短編が5編。表題作は、諸岡進也と糸子がラブホテルに泊まって朝帰りという大事件が起こったが、二人の間には何もなかったという。自動車のトランクに入りこんだ謎の少女が事件のカギとなり、意外な真相にたどり着く。「てのひらの森の下で」は加代子が朝の散歩で死体を発見したが、警察を呼ぶ間に忽然と消えてしまう。マサはそれが死体でないとわかったが、犬の身では加代子に伝えられず。消えた死体の正体は……。「白い騎士は歌う」は多額の借金をした青年が勤め先の社長を殺して大金を手に失踪した事件の真相を暴く。「マサ、留守番する」は、慰安旅行に出かけた探偵事務所の留守番をしていたマサが遭遇する殺人事件の謎を解く。「マサの弁明」はなんと宮部みゆき本人が探偵事務所に相談に来るという珍品。「マサの弁明」以外は非常に救いのない事件ばかりなんやけれど、作者の手にかかれば、それが陰惨にならん。犬を語り手にしているという効果もあるのかもしれんけれど、作者の時代小説に通じる「人情」が通奏低音のように流れているのやないかと思う。そういえば、作者の捕物帳は小味な短編が多い。本書は現代もののミステリなんやけれど、レギュラーの登場人物たちの愛すべきキャラクターは捕物帳に通じるところがある。いずれも陰惨になるところを探偵事務所の面々と、語り手のマサに救われているということなんやろう。名犬マサの活躍をたっぷり楽しめる短編集です。
posted by 喜多哲士 at 23:50| Comment(0) | 読書全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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