2025年03月05日

薄紅天女

 今日も出勤日。坂道の学校付近は小雨が降ったりやんだり。今日は高校入試の出願受付日。数十年間ずっと中学生が志望校に願書を持って行って、それを我々教員が受理し……というのが続いていたんやけれど、今年からオンライン出願に変更になった。受付係の仕事も、オンラインで提出された願書や添付書類をパソコンで不備がないか確認するだけという非常に手早くすむものになった。いやあ、今までなんで頑固にアナログを通していたんや。あっけなく受付業務がすんでしもうた。
 気候の変化が激しいのと、重要な業務が一通りすんだためか、午後からは体がだるいのとモチベーションが上がらんので苦労した。それでも、提出物を終業式の日に生徒に返却する準備を少しばかり進める。定時に退出。
 帰宅後、寝床にどぶさって少し読書。夕食時には野球中継を見る。日本代表とオランダ代表の国際強化試合。わがタイガースからはサトテル、大山、石井、才木が選ばれていたので、見る気になったのです。サトテルはヒットを放ち、大山は四球を選び、石井は好投。よかったよかった。
 夕食後、社説のダウンロードなどをしてから、読書の続き。今日は寝落ちせずにすんだ。明日は休み。ゆっくりと疲れを取りたい。
 荻原規子「薄紅天女 上・下」(徳間文庫)読了。「勾玉三部作」の最終話。前2作が神話を題材に取っていたのに対し、本書はなんと平城京から長岡京に移転する際の「呪い」が舞台。2部構成で、1部は関東に住む藤太と阿高の同い年の甥と伯父が運命に導かれるように勾玉を持って坂上田村麻呂と西へ向かう。2部は長岡の都から伊勢に移される皇女苑上が幼い弟を守るために身代わりとなって男装し、東へ向かう。阿高と苑上は出会い、阿高に伝えられた闇の力を次第に苑上がコントロールするようになっていくという展開。
 はっきりと史実に残っている部分の隠された一面をファンタジーとして描くという、前2作とはうって変わった構成が、非常にうまい。1作ごとに作者の力量が上がっていっていることがはっきりとわかる。さらに、恋愛要素もかなり強くなっていて、おそらく本作で作者はやっと作家としての力を確立したんやないかと思う。それくらい完成度が違う。巻末のあとがきがわりの対談で、作者は「書きたいものを書くことしか考えていなかった」旨の発言をしているけれど、デビュー作は書きたいものをただただ書いていただけで、物語の構成にまで思いが及ぶというところまで達してなかったんやないやろうか。2作目からは読者を意識するようになり、おそらく本作で「書きたいこと」を読み手に伝えるというところまで意識できるようになったんやないかと私は感じたんやけれど、如何。
 三部作の中では、キャラクター造形ゃ構成が完成された本書をお薦めしたい。「勾玉」以降の作品もこのあと新装版で出るというので、作家としての成長をきっとたどる事ができるようになっているんやろう。今回の徳間文庫の新装版にはおつきあいするつもりやけれど、私はそれで十分やと感じている。なにか感性の違いみたいなものがあって、あまりのめりこむほどではないんですねえ。
posted by 喜多哲士 at 23:59| Comment(0) | 読書全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください