2025年05月12日

七十四秒の旋律と孤独

 愛すれどタイガース「森下の4試合連続アーチで東京ドーム5連勝」を更新しました。

 今日は出勤日。朝から平熱より少しだけ体温が上がっている。そのせいかだるい。授業が詰まっていて空き時間が1コマしかないので非常に疲れた。放課後は中間考査の想を練る。定時に退出。
 帰宅後、すぐに録画した相撲中継を見る。今日は琴櫻も勝ち、横綱大関陣は安泰。そのあと、先日録画した「大相撲どすこい研/きめ出し」を見る。照ノ富士があそこまで深く研究しながらきめ出しの技を磨いていたとは。相撲の世界、やはり奥が深い。
 妻も今一つ体調がすぐれぬ模様。早く寝るのに越したことはない。
 久永実木彦「七十四秒の旋律と孤独」(創元SF文庫)読了。作者のデビュー短編である表題作と、連作中編からなる。表題作は、宇宙船がワープする際に74秒間のタイムラグが発生することが判明したため、その空白の時間の間に行動できる人工知性「マ・フ」の紅葉の視点で語られる宇宙空間での戦いを描く。そして大量の「マ・フ」が宇宙にある多くの惑星に分かれて移住し、すでに滅んだ自分たちの創造主「ヒト」の残した「聖典」にしたがって惑星観察を続けているという独特な世界観で、復活した「ヒト」と「マ・フ」の間に起こる物語である「マ・フ クロニクル」が続く。種明かしになるのでここでは書かないけれど、人間の独善的な性質と、純粋に「聖典」を守ってきた「マ・フ」が、次第に関係を深めながら、その性質を変えてくる様子を描く。そこには常になんともいえない寂寥感が通奏低音のように流れている。特に、主人公の「マ・フ」であるナサニエルと蘇った「ヒト」のオク=トウとの微妙な友情の繊細な変化には心打たれるものがある。特に「クロニクル(年代記)」らしく、「マ・フ」と「ヒト」との歴史が少しずつ明らかになるにつれ、物語にぐいぐいと引きこまれていく。手塚治虫先生が永遠のテーマとして書き続けた人間とそれ以外のものとの葛藤や、生命とは何かというテーマが、本作には引き継がれているのだと感じずにはいられなかった。こういうものをかける人が連綿と続いて出てくるのだなあ。今後も注目して読むべき作家やと思う。
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2025年05月01日

刑罰0号

 今日は出勤日。明日は定休日なんで、次の出勤は1週間後になる。
 だんだん暑くなってきた。生徒は飛び石やけれど、思うてたより出席率は高い。ただ、いくぶんだれ気味ではある。
 空き時間は来週以降の教材作成など。そろそろ中間考査の問題作成にも取り掛からなあかん。昨年の問題を流用、というのはちょっと難しい。新しい勤務校の生徒たちはそれほど勉強が得意というわけではないけれど、かというてまるであかんというほどでもないみたいなんでねえ。ここは手探りで行くしかないか。
 教材作成などをしていて、少し遅くなる。
 帰宅後すぐに追っかけ再生でプロ野球「ドラゴンズ-タイガース」戦を追っかけ再生で見る。今日も中継はサンテレビ。解説はドラゴンズOBの吉見さん。でも関西出身なんですよね。試合はなんか審判の微妙な判定でリードされ、そのまま負け。今季初の同一カード3タテを食らいました。名前がバンテリンドームに変わっても鬼門は鬼門か。
 試合終了後、社説のダウンロードをしていたら、寝落ち。昼と夜で寒暖差があるから、自律神経なるものがうまく働いてへんのかもね。
 西條奈加「刑罰0号」(徳間文庫)読了。時代小説の多い作者やけれど、実はファンタジーノベル大賞受賞でデビューしたのでありました。本書はまっとうなSF。死刑は残酷、無期懲役は減刑があり被害者家族には割り切れないものが残る。というわけで、佐田博士が開発したのが「刑罰0号」。殺された被害者の脳からその部分の記憶を取り出し、加害者に脳波で送りこんで追体験させ、被害者の苦しみを味合わせるというもの。ところがあまりにも効果がありすぎて加害者の精神が破壊されてしまうということで、開発は中止に。しかし佐田博士の弟子であった江波はるかは隠れて実験を続け、なんとかこの「刑罰0号」を実用化させようとしていた。開発者の佐田博士の意識は、佐田博士を見殺しにした少年森田俊の脳内に流れ込み、森田の人格は佐田博士の人格と融合してしまう。一方、「刑罰0号」の研究は、佐田博士の息子である佐田洋介博士により、なんとイスラム過激派の手に渡ってしまっていて……という話。被害者の断末魔を加害者に味合わせるというアイデアが面白い。そして、物語はこの技術をめぐり、二転三転する。むろん「刑罰0号」そのものにも意味はあるんやけれど、それ以上にその技術をどのように使うかというところが焦点になってくる。医療の手段として有効に使うのか、テロ組織が敵対勢力に対しする兵器として使うのか。これはSFの主要なテーマのひとつである、高度な技術のは使い方でどうにでもなるというアイデアを真正面から扱ったもので、最近には珍しい直球派の作品といえる。その直球にうまく変化球を織り交ぜているので、読み手はその直球の威力に唸らされることになる。作者はあまりこの系統のSF作品は書いてないみたいやけれど、他にもまたこういう直球派のSFを書いてみせてほしいものです。
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2025年04月21日

シュレーディンガーの少女

 愛すれどタイガース「伊原がプロ入り初勝利で連敗止める」を更新しました。

 今日は出勤日。「時事問題」の授業では各政党の代表者の名前を書かせる教材を用意し、スライドショーで正解を見せたり、選挙に関する報道の動画を見せたりと、あれこれ工夫して生徒たちに関心を持たせられるように腐心する。
 昨日外出したこともあり、ちょっとしんどいけれど、6時間目までなんとか踏ん張り、放課後も明日以降の授業に向けて教材研究。まあ
坂道の学校では月曜日は7時間目まで授業があったんやから、そのことを思えば乗り切れるよね。
 定時に退出し、スムーズに乗り換えられ、比較的早めに帰宅。社説のダウンロードも、今日は新聞休刊日のためそれほど時間を取ることもなく、読みかけの本を読んでしまい、次の本に取りかかったりと、久しぶりに読書が進んだ。明日は授業は2コマ。教材作成などにたっぷりと時間を割きたい。坂道の学校で使うた教材はそのままで使えないものもあるのでね。
 松崎有理「シュレーディンガーの少女」(創元SF文庫)読了。作者あとがきによると、「ディストピア×ガール」をテーマにした短編集。少子高齢化対策のため、65歳で亡くなるように調整された社会で、余命1年の女性が浮浪児の少女を育てる「六十五歳デス」、健康増進のため、肥満している者を公開でサバイバルさせる「太っていたらだめですか?」、数学嫌いの高校生の女子が、突如数学を禁止している異世界に飛ばされ、数学好きのグループに保護されていく中で、数学の本当の面白さに目覚めていく「異世界数学」、近未来を舞台に、秋刀魚を知らない小学生の女子が、夏休みの自由研究として秋刀魚の味の再現をする「秋刀魚、にがいかしょっぱいか」、離島に遭難した少年の恋した少女は生贄とされる運命にあり、少年はそれを何とか防ごうとするが、その生贄の儀式には大きな秘密が隠されているという「ペンローズの乙女」、そして少女が量子ロシアンルーレットで無数の生き方をする表題作「シュレーディンガーの少女」を収録。ディストピアと必ずしも言い切れない設定もあるけれど、真摯に生きる女性たちが、生きづらい世界で戦う姿を生き生きと描き出している。個人的には「六十五歳デス」で、限られた生を生き抜く女性と、彼女が育てる少女の姿や、「太っていたらだめですか?」で、体形によって淘汰されるディストピアで必死に生き残ろうとする女性たちの心情などに感じ入るところがあった。ただ、ディストピアものとして読んだら、その設定には幾分甘さが感じられ、舞台となる世界の恐ろしさを感じさせないのが幾分気になった。本質的に残酷になれない書き手なのだろうと思う。とはいえいずれも切れの良いアイデアで勝負する面白さに満ちた短編集でありました。
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2025年04月09日

わたしたちの怪獣

 今日は定休日やけれど、坂道の学校の離任式。久しぶりに坂道の学校へ。社会科の職員室でくつろぎ、それから校長室へ。会議室で教職員向けの離任のあいさつ。新しい勤務校の様子や、坂道の学校での思い残したことなどを話す。そこから体育館に移動し、在校生向けにあいさつ。他の転出した先生たちは来なかったので、私一人のあいさつになり、ものすごく緊張。生徒との思い出などを話して降壇。これだけでものすごく疲れた。
 もうしばらく校長室で校長と歓談し、社会科の職員室に戻ってしばらくゆっくり過ごしてから退出。
 せっかくなので、乗り換えの最寄り駅近辺を散策し、早めの昼食をとり、昼過ぎに帰宅。なんかものすごく疲れてしもうていて、すぐに午睡。夕刻目覚めて社説のダウンロードなどをしてから、プロ野球「タイガース-スワローズ」戦を追っかけ再生で見る。今日の中継はNHKのBS。解説は宮本さん。せっかく先制したのに、暴投やら悪送球やらミスの連続で逆転され、小刻みな継投にかわされて連敗。ショートの小幡の好プレーに対し、現役時代に攻守のショートやった宮本さんは「これくらい、小幡には当たり前のプレー」と。かなり小幡の守備を高く買うてはるんやなあ。
 夕食後、寝床で読書の続き。明日はまた仕事。今日の離任式は定休日やったけれど出張扱いになるかもしれんので、交通費が返ってくるか。
 久永実木彦「わたしたちの怪獣」(創元SF文庫)読了。表題作が星雲賞を受賞した短編集。表題作は、DVで父を殺してしまった妹の罪を隠蔽しようと、怪獣が出現した街に父の死体を捨てに行く姉の話。かなりえげつない内容であるのに、それを日常生活のように淡々と描いているところに、この作者の味があるようです。「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」はタイムパトロルが行き過ぎて、過去に起こるはずの事故などをすべて未然に防いで、なかったことにしてしまう「声掛け」という仕事の男のささやかな反抗を描く。「声掛け」が過去をどんどん変えていくという設定が面白く、また、とうじょうじんぶつたちの描写にも味がある。「夜の安らぎ」は吸血鬼と思われる人物と知り合った、いじめられたりバイト先でハラスメントを受けたりしている少女が、すべてをなげうって吸血鬼になりたがるが、吸血鬼がそれを止めようとするという、ホラー要素とブラックユーモアが混ざり合った奇妙な味のする話。「『アタック・ザ・キラートマト』を観ながら」は、Z級の映画を上映してから閉館にしようというところに偶然行ってしまった主人公が、本当のゾンビ騒動に遭遇してしまう話で、作者の映画愛が随所に挟みこまれている。これもホラー要素とブラックユーモアを絶妙に混ぜていて、独特の味わい。
 SFやホラーの要素を、淡々とした日常として描くタッチは作者独自のものなんやろうと思う。どの作品もスケールが大きいんだか小さいんだかという不思議な印象が残る佳品で、こういう既存のものを下敷きに独自の世界を書く新しいタイプのSF作家が出てきているんやなあと、感じた次第。この味わい、悪くありませんぞ。
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2025年04月07日

パラドクス・ホテル

 愛すれどタイガース「門別のプロ入り初勝利で首位に浮上」を更新しました。

 今日は出勤日。通勤時間が短くなったので、朝は比較的ゆったりと朝食をとったりできる。とはいえ新しい職場に来るのは3日目。鍵の位置とか、いろいろとわからんことが多いので、少しずつ覚えていくしかない。あまりひんぱんに転勤させられると、こういうことを一からやっていかんならんから困るのだなあ。
 今日は特に割り当てられた仕事はなかったので、時間割を確認してから教材作成など。ただ、「時事問題」という科目については坂道の学校の生徒に出したような資料ではうまいこといかんかもしれんので、昨年担当していた先生に聞いてみんとあかんな。
 カレンダーを見ながら中間考査までの授業時間数も確認。試験範囲として予定していることを全部やろうと思うたら、かなりつめつめになるなあ。ここらあたりは生徒の反応を見ながらやるしかないか。
 定時で退出し、乗換駅周辺に何があるかなど偵察(?)したりする。坂道の学校の時は駅前にアーケード商店街があったりして面白かったけれど、さて、今度のところはどうかな。
 帰宅して、寝床にどぶさると、どっと疲れが。それでも社説のダウンロードや読書など。
 ロブ・ハート/茂木健・訳「パラドクス・ホテル」(創元SF文庫)読了。タイムトラベルができるようになった時代、その空港に隣接したホテルで警備を担当しているジャニュアリーは、レズビアンの恋人だったヒメーナを事故で亡くしてしまっていた。また、かつて時間犯罪取締局の調査官をしていたため、タイムトラベラーの職業病である時間離脱症にかかっていた。そのため、時々過去の情景がリアルに自分の前によみがえり、現実と区別がつかなくなっている。そして、今度は未来の情景がランダムに見えるようになった。ホテルと時間空港の売却をもくろむ上院議員ドラッカーは入札した金満家たちを集めてホテルでサミットを開こうとしているが、何者かが時間軸を狂わせていることにジャニュアリーは気づく。しかし、それを病気のせいにされ、もと上司のアランはなんとかジャニュアリーを現場から引き離そうとする。思うように調査が進まない中、犯人は次々と騒動を起こし……という話。読み初めは現実と過去視の錯綜した状態に戸惑う主人公とともに、私も読みづらさを感じていたのだけれど、主人公が犯人の糸口をつかみ、行動に移し始め、犯人との追っかけあいになるあたりから読むスピードも上がってきた。時間に対する扱いがうまく、過去は変えられないが未来はどうか、というあたりの謎解きなどはなかなか面白かった。ミステリ風味をうまく時間の錯綜とからませてあり、タイムトラベルものとしては新味があった。ただ、私自身が転勤などでバタバタしている時に読み始めたので、頭が働かず、読むのに時間がかかってしまった。こういうのは一気に読んでしまわんと面白くないというのにねえ。
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2025年03月28日

星に届ける物語

 今日は定休日。先週土曜日出勤の代休でもあるけれど、あえて振り替え休日は取らず。
 午前中は昨夜録画したアニメのほか、大河ドラマ「べらぼう」を2話見て、これでリアルタイムに追いつく。
 昼食後は少しだけ午睡し、夕刻出かける。駅前に行き、いつもの本屋さんで妻の「月刊フラワーズ」を買い、洋菓子店で職場に持っていく焼き菓子を購入。それからいつもの理髪店で整髪。風が強く、首筋がすーすーする。
 帰宅後は社説のダウンロードなど。そして、タイガース対カープの開幕戦をテレビでほぼリアルタイムで見る。今日の中継はytv。ローカルニュースの時間も実況中継にあてて、試合開始からの中継。初回にいきなりサトテルのホームランで先制し、開幕投手の村上が9回2死まで無失点の好投。8回には大山と前川の連続タイムリーでリードを広げ、最後は岩崎が占める理想的な展開の勝利。藤川球児新監督、見事初勝利。いやあ、気持ちいいなあ。東京のジャイアンツの試合の中継に合わせての放送ということで、ジャイアンツの試合が長くなり、放送も延長され、試合終了からヒーローインタビュー、藤川監督へのインタビューも放送時間内に収まった。解説は岡田はんと赤星さん。岡田はんの「解説」は本音で好きという人も多いけれど、アナウンサーが「村上は昨年このマツダスタジアムでサヨナラ負けし悔しい思いをしました」と言うと、「俺の方が悔しかったわ」と無駄に張り合う。どんな対抗意識やねん。村上は泣いてたぞ。岡田はんは泣いたんか。先発要員の村上をリリーフに回すという「普通」でないことをしたあんたの采配が敗因やないか。気分のいい試合やったけれど、ここの会話だけはむかむかした。
 試合終了後はしばらく読書。明日もしっかりと試合を見ますぞ。
 日経「星新一賞」受賞作品集「星に届ける物語」(新潮文庫)読了。そうか、「星新一賞」ももう11回になるのか。その11回の一般部門の最優秀作を集めたアンソロジー。プロデビューした人や、研究者、純然たるアマチュアも含むバラエティに富んだ受賞者の顔ぶれ。「理系文学」の賞ではあるけれど、SFのコンテストのひとつと考えてよかろう。サンゴを繁殖させ、二酸化炭素を取りこむという発明が逆に自然界のバランスを崩し破滅寸前まで追いこまれる相川啓太「次の満月の夜には」や、脳神経に直結されたバイザーの普及が人間に与える影響を描いた之人冗悟「OV元年」、葉緑素を移植する身体改造で飢餓がなくなった世界に新たに起こる問題を綴る白川小六「森で」などが私の好み。実は私もある部分でこの賞が始まったときから関わったりしているんやけれど、年を追うごとにレベルが上がってきていて、本書に掲載された作品はいずれもアイデア、構成、文章力の高さでは抜群。こうやって毎年の最優秀作だけで1冊のアンソロジーができるに至ったことに感慨深いものがある。できれば、惜しくも最優秀賞を逃した作品も集めたアンソロジーも企画してもらいたい。そのためには本書が売れなければならんわけで、非常に質の高いアンソロジーであるので、心からお薦めいたします。
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2025年03月15日

惑星カザンの桜

 今朝はちゃんと起きられ、出勤もできたけれど、心身ともにくたびれていまして、フルで働けるかと心配になる。ただ、作業は順調にいき、午後2時には完了。時間給を取って帰ってもよいとのことやったので、速攻退出。帰宅後すぐに午睡。夕刻起きて、昼に録画した「阪神タイガース-シカゴ・カブス」戦を見る。先発の門別がカブス打線を5回完全に抑え、近本やサトテルのタイムリーでリードし、3-0で勝利。向こうがどこまで本気やったかわからんけれど、こと投手リレーでは若手中心。それでメジャーリーガーを抑えたんやから大したもの。そのあと、録画した相撲中継を見る。大の里が1敗を死守。高安も好調。高安に一度は賜杯を抱かせたいなあ。
 そのあと寝床で本を読んだりスマホをいじったりしてたら、だらだらしてしまいなかなか起き上られなんだ。明日は「たちよみの会」。リフレッシュしたいねえ。
 林譲治「惑星カザンの桜」(創元SF文庫)読了。一万光年を越えた惑星の第一次調査隊が、期限がきても地球に帰ってこない。第二次調査隊が惑星カザンに到着すると、なぜか地球の桜が植わっていたり、第一次調査隊のメンバーそっくりの「カザン人」が迎えてくれたり。しかし、全く異質の生態系と文化を持つカザン人とのファーストコンタクトは食い違いが激しく、様々な方法でカザン人とコンタクトしていくが、一部の身勝手な調査員のせいで調査は思わぬ方向に……という話。林さんの得意技である異星人とのディスコミュケーションと、異星人の異質さを非常にコンパクトにまとめている。細かすぎる説明は適度に省略され、しかもカザン人がこれまでの林さんの創造してきた異星人とは全く違う性質を持っていて、さすがアイデアの宝庫たる林さんらしい物語にまとまっている。調査隊の中の反乱分子の描写がいささかステロタイプ的なのがもったいないけれど、せめて2冊くらいの分量があればもっとそちらの描写にも工夫がされたやろうと思うと少し残念。とはいえ林さんの宇宙ハードSFファンは安定した筆致を満喫できること請け合いでありますね。

 明日、3月16日(日)は「たちよみの会」例会です。今月も13:00~15:00の短縮バージョンです。ご参加お待ちしています。
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2025年03月11日

ハリー・オーガスト、15回目の人生

 今日も出勤日。朝から雨。小雨やけれど、降ったりやんだりが続く。明日の入試本番に向けてのミーティングなど。いろいろと片付けんならん仕事があるんやけれど、あまりペースが進まん。体がだるく、重い。なんとか少しでも仕事を進め、定時に退出。帰路も降ったりやんだり。
 帰宅後、少し読書をしてから、夕食。録画した相撲を見る。国会中継はなく、今日はすべて録画できていた。今場所は大の里がどっしりと構えた相撲で好調。琴櫻は今日も力を出し切れず阿炎に敗れる。「心技体」の「心」の部分に問題がありそうな。いや、もしかしたら「体」もか。豊昇龍は土俵際の捨て身の投げで若隆景を下して2連勝。まだちょっと危なっかしい。そこが豊昇龍らしいところなんやけれど。
 相撲を見た後は、寝床で読書。社説のダウンロードなども。さあ、明日は試験本番。気合入れていかねばね。
 クレア・ノース/雨海弘美・訳「ハリー・オーガスト、15回目の人生」(角川文庫)読了。主人公、ハリーは「死に戻り」の体質の持ち主。死んでも、また出生の時点から生き直す。そのたびにいろいろな生き方を試していく。その間の記憶もすべて残っている。そのような体質のものが集まって作った互助クラブというべ「クロノス・クラブ」の面々はなるべく歴史に影響を与えないようにしている。かつて歴史を改変し、人類を破滅に追いこんだ人物がいたからである。しかし、ハリーは、そんな動きに反抗し歴史を改変し神のような存在を作り出そうとするヴィンセントと出会う。14回目の人生まで、その目論見を阻止しようとするハリー。しかし優秀な頭脳を持つヴィンセントはハリーが「死に戻り」をしないようにと妨害してくる。ハリーとヴィンセントの互いを知り抜いた同士による激しい戦いの結果は……という話。「死に戻り」というアイデアはよくあるけれど、出征から何度も人生をやり直すという非常にきつい体質の持ち主たちの苦悩がと、歴史改変をもくろむヴィンセントとそれを阻止しようとするハリーの激しい戦いが、緊迫感を持って描かれている。例によって「積ん読」から掘り出してみたんやけれど、予想以上に迫力があり、なんで今まで読んでなんだかと思うたくらい。「死に戻り」の描写も、時系列順にはなっているんやけれど、カットバックで別な人生を生きた時の記憶が効果的にはさまれる構成もうまい。今はもう手に入りにくくなってるかもしれんけれど、古本でええから一度読んでみてほしい。「死に戻り」で10数回も人生をやり直さんならん体質なんて、ほんまにきついと思うよ。

 3月16日(日)は「たちよみの会」例会です。今月も13:00~15:00の短縮バージョンです。ご参加お待ちしています。
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2025年01月18日

人類の知らない言葉

 今日は完全休養日。昨日の深夜に録画した深夜アニメを見たり、朝に録画した「題名のない音楽会」を見たりした後、しばらく読書。
 昼食後、午睡。夕刻目覚める。妻は日帰り帰省。起きてすぐに録画しておいた大相撲中継を見る。炎鵬の相撲が時間内に入っていた。足取りで竜勢を破る。怪我さえ治れば、幕下以下やと技の切れで勝てるんやなあ。勝ち越しまであと1勝。勝ち越せば来場所は幕下復帰は間違いない。幕内では千代翔馬が不戦勝で7連勝。金峰山も7連勝。王鵬を豊昇龍が下して1敗に引きずり下ろす。勝ちたいという気持ちと、体の動きが一致している。琴櫻は辛うじて連敗を止めたけれど、先場所のような相撲が取れていない。大の里は白星先行。今日の相撲は勢いだけではなく技能的にも問題なし。こういう相撲が明日からも取れたらもう少し星をのばす事ができるやろうな。
 相撲を見てから、帰宅した妻と夕食。食後、さる事情でスマホのアプリを立ち上げたけれど、何度やってもうまくアクセスできず。いらん時間を使うてしもうた。あきらめて読書の続き。
 エディ・ロブソン/茂木健・訳「人類の知らない言葉」(創元SF文庫)読了。テレパシーを使って会話する異星人ロジア人の通訳をしているリディアは、自分が担当しているロジア人の文化担当官フィッツの殺害現場を発見。殺害容疑は晴れたものの、真犯人は見つからず。そこへ、なんと死んだはずのフィッツからのテレパシーが聞こえてくる。フィッツの言葉に導かれ、リディアは真犯人を捜索する。手がかりをたどり、真犯人にたどり着いたかに思われたが……という話。テレパシーを受けて通訳すると、脳がだんだん酩酊状態になり、長時間通訳した翌日は二日酔いのようになるという設定がユニーク。リディアの人物造形が小市民そのものというあたりも読んでいて楽しい。真犯人にたどり着いたかと思われたけれど、その後に急転回し、真相にたどり着く展開はスピード感があって楽しく読める。SF設定を使うたミステリという感じで、SFとしての面白さよりも楽しく読めるミステリという感じか。できれば異種族間のカルチャーギャップなどをもっとミステリに組みこんでいれば傑作と呼べたと思うけれど、そこらあたりはあまり十分に活用でけてへんので、深みに欠けるのが残念。軽く楽しく読めるミステリSFというところ。ところどころにイギリス人作家らしい諧謔がスパイスのように効いているのが楽しいんやけれどね。

 明日、1月19日(日)は「たちよみの会」例会です。今月も13:00~15:00の短縮バージョンです。ご参加お待ちしています。
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2024年12月25日

天保からくり船

 今日は振替休。朝からアニメを見ていたけれど、ヤクルトレディが来たりするので中断。寝床で読書をしたりしていたらちょっと寝てしまう。昼食後、また読書の続きをしたりスマホをいじったりと、だらだら過ごす。明日はもう少し生産的なことをせんならんなあ。
 山田正紀「天保からくり船」(春陽文庫)読了。主人公は江戸の町の裏長屋に住む傘張り浪人の弓削重四郎。寛永寺の火災で江戸の町は少しずつ「魔」の影響下に。廻船商人の阿波屋利兵衛はなぜか重四郎と接触をしてくる。さらには重四郎の同志と名乗る居合術の弓師備前との遭遇。唐人たちのかんかんのうに操られる人々。江戸の町に何かが起こっている。重四郎は本意ではなかったが巻きこまれるように「魔」と対決していくことになる。はたして江戸の町を操る「からくり」とは……という話。作者らしく冒頭の寛永寺の火災から謎の現象が起こったり、「時鐘」を打つ老人の登場など、次々と謎が繰り出されていき、最初はばらばらに現れていた謎が、結末で一気に収斂し、驚天動地のラストシーンに雪崩れこむ。ネタバレになるので結末については書くわけにはいかんけれど、江戸を舞台にした時代伝奇小説と思いきや、少しずつぽろりぽろりとSFではないかというキーワードが登場人物の口から出てきて……いや、とにかくやられたという感じ。こういう力業の使い方もあるんやなあとただただ感服するのみ。こんな作品が長らく絶版になり、そして文庫化されたけれど比較的マイナーなレーベルからの文庫化とは。帯の推薦文は日下三蔵さん。おそらく今回の復刊も日下さんが噛んでいるんやろうなあ。埋もれていた怪作を掘り出してくれた版元に感謝あるのみ。いやほんま、興味のある方はどんでん返しなんて紋切り型の表現では語れん結末にぜひ驚いてもらいたい。
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